地方財政の支出が地域経済の成長に及ぼす影響分析 : 忠清南道における社会福祉分野の支出を中心に
過去の地方財政は、国家財政の一部として中央予算の従属的概念として把握されており、マスグレイブの3大機能のうち、資源配分の機能にのみ関連するという消極的立場に止まっていた。しかし、地方自治制の発展や地方財政の規模拡大に従い、もはや今は国家と地方発展のために、地方財政の機能は国家財政のそれと同じ側面で見なければならない。
近年、少子高齢化、経済 · 社会的格差の問題が深刻化し、中央政府はもちろん、地方政府の社会福祉分野における支出拡大が求められている。一方で、地方政府の財政自立度は落ち、政府負債は増している。特に、昨年から新型コロナウィルス感染症を経験しながら、さらに悪化した経済状況の下で政府主導の財政支援は厳しさを増している。一方、社会福祉·社会的セーフティネットの拡充への財政支出要求は強まっており、財政支出の効率的意思決定が一層重要になると考えられる。
本稿は、2009年から2019年までの忠南の財政支出データを用い、地方政府の財政支出が地域経済の成長の及ぼす影響を分析したうえで、財政乗数を導出し財政支出の効果を把握した。
その結果、社会福祉の財政弾力性は 0.065 で、忠南における社会福祉の財政支出は、忠南のGRPDへ正(+)の相関関係があると判明した。なお、社会福祉財政支出変数の算出弾力性の推定値を用いて導出された、2019年基準、忠南における社会福祉分野の財政乗数は 1.41、2020年のは 1.29、2021年のは 1.14であり、これまで忠南の社会福祉支出はの成長に役立ったと言える。ただし、2022年以後は、財政乗数が1に至らない値で、その効果が半減すると予想できる。
最近、“コロナ相生国民支援金”が、当初、所得下位88%への選別支給に決定されたが、京畿道の普遍的支給の決定以後、忠南をはじめ、多くの地域が普遍的支給へと舵を切っている。限られた資源や財政状況、財政の効率的かつ効果的支出などを総合的に鑑み、地域の財政状況相応な政策を進める意思決定がなお重要な時点である。
초록
과거 지방재정은 국가재정의 일부로서 중앙예산의 종속적 개념으로 파악하여 Musgrave의 3대 기능 중 자원배분 기능에만 연관이 있다는 소극적 입장에 머물렀으나, 지방자치제도 발전과 지방재정의 규모 확대에 따라 이제는 국가와 지역발전을 위해 지방재정의 기능도 국가재정 기능과 같은 측면에서 보아야 한다.
근년, 저출생, 고령화, 경제·사회 양극화 문제가 심화되면서 중앙정부는 물론 지방정부의 사회복지 지출 확대가 요구되고 있지만 지방정부의 재정자립도는 하락하고 정부부채는 증가하는 추세이다. 여기에 작년부터 코로나19 팬데믹을 겪으면서 더욱 침체된 경제상황 하에서 정부주도의 재정지원은 더욱 어려워진 반면, 사회복지 사회안전망 확충에 대한 재정지출 요구는 강해지고 있어 재정지출에 관한 효율적 의사결정이 더욱 중요해질 것으로 보인다.
본 연구에서는 2008년부터 2019년까지 충청남도의 재정지출 자료를 사용하여 지방정부의 재정지출이 지역경제 성장에 미친 영향을 분석하였다. 재정승수를 도출하여 재정지출 효과를 파악하고 나아가 효과의 변화를 예측하였다.
분석결과, 사회복지의 재정탄력성은 0.065로 충남의 사회복지 재정지출은 충남의 GRDP에 정(+)의 상관관계가 있는 것으로 나타났다. 사회복지 재정지출 변수의 산출탄력성 추정값을 사용하여 도출된 2019년 기준 충남의 사회복지분야 재정승수는 1.41, 2020년 기준 1.29, 2021년 기준 1.14로 충남의 사회복지 지출은 지금까지 충남의 GRDP 성장에 기여해왔다고 할 수 있다. 단, 2022년 이후는 재정승수가 1 미만으로 추정되어 그 효과가 반감될 것으로 예상된다.
최근 “코로나 상생 국민지원금”이 당초 소득하위 88%의 선별지급으로 결정되었으나, 경기도의 보편적 지급결정 후, 충남을 비롯한 많은 지역이 보편적 지급으로 선회하고 있다. 한정된 자원과 재정상황, 재정의 효율적·효과적 지출을 종합적으로 감안하여, 지역의 재정상황에 적합한 정책추진의 의사결정이 더욱 중요한 시기이다.
키워드:
재정지출, 지역경제, 재정승수Ⅰ. はじめに
マスグレイブは、財政における3大機能は、資源配分の機能、所得再分配の機能、経済安定化の機能と規定した。過去の地方財政は、国家財政の一部として、その機能や役割も中央予算の従属的概念として把握しており、上記の3大機能のうち、資源配分の機能にのみ関連するという消極的立場を見地してきた。しかし、地方自治制度の発展や地方財政の規模拡大に従い、もはや今は国家と地方発展のために、地方財政の機能は国家財政のそれと同じ側面で見なければならない。すなわち、地方政府の基本ミッションは、住民の生活を安全に守りながら、各住民の経済社会活動の機会や便益を提供し、ひいては、住民の福祉水準を向上させることにある、これが地方政府の存在理由とも言える。
近年、少子高齢化、経済·社会的格差の問題が深刻化し、中央政府はもちろん、地方政府の社会福祉分野における支出拡大が求められている。一方で、地方政府の財政自立度は落ち、政府負債は増している中、去年から続いている新型コロナウィルス感染症という未曾有の社会的災害は、社会福祉分野の財政支出をいつよりも強く求めている。2020年、4回に渡る補正予算が成立し、新型コロナ対策のための財政金融支援措置の総額は310兆ウォンに達しており、今年も長期化する防疫状況や被害累積による民生回復および防疫支援のために2回の補正予算を組まれている状態である1)。
政府主導の財政支援はすばやい速度で拡大されているにも関わらず、これを後押しする財源を確保するのは、特に新型コロナウィルス危機による不況の下ではさらに難しい状況である。一方で、社会福祉·社会的セーフティネットの拡充に対する財政支出の要求は強くなっており、財政支出への効率的な意思決定がさらに重要になると考えられる。わが国における財政支出の6割が地方政府によって行われているのを鑑みると、地域の視点で財政の効率的使い方および効果を調べるのは有意味であり、なお、財政支出の部門別歳出が地域経済にいかなる影響を及ぼすかを調べるのも必要である。
本稿では、2008年から2019年まで、広域地方政府である忠清南道の財政歳出資料を用い、地方政府の財政歳出が地域経済に及ぼす影響を分析する。また、計測し、財政支出効果を把握した結果をもって、インプリケーションを出す。
Ⅱ. 先行研究
地方財政の支出や地域経済の成長に関する研究は、大きく分けて、財政支出が地域経済に及ぼす影響に関する研究と財政乗数の計測に関する研究がある。本章では、2つの分野に大分して先行研究をまとめる。
1. 地方財政支出の効果
地域経済成長に関する初期の研究では、地域経済の成長を国家経済の一部として見なす視点であり、経済成長に関する主な要因としては技術·人口変化などが挙げられた。以後、ケインズ観点での公共支出の変化が説明変数に用いられ、所得に対する生産関数を推定する研究が進められると同時に、地域経済の成長·開発に関する地方政府の財政政策効果を推定·説明するための研究が成されてきた。
オ·ビョンキ(2005)は、教育·文化費が投資的経費として地域経済に正(+)の効果をもつと提示したが、ただし、首都圈のデータのみで分析した限界を持っている。この結果は、オ·ビョンキ, キ厶·デヨン(2005)が、社会開発費を投資的経費として、社会保障費を経常的経費と定義·分類して、これらの財政支出が長期的には地域経済にポジティブな要因であろうと提言した研究と軌を一にする。
ユン·チウン他(2009)は、代理変数を用いて84市を対象に3年間(2003~2006)お財政支出効果がいかに現れるかをパネル分析で推定した。
イ·ヨンソン(2009)は、基礎自治体データを用い、一般行政費や経済開発費の項目より社会開発費の項目がGRDPに及ぼす影響が大きいと分析し、この効果は経済成長率の低い地域でより明らかに現れると主張した。これは、後のオ·ビョンキ(2014)の研究で、韓国における地方政府の際出上、投資的支出が地域産業育成やSOCの拡充、教育などの分野を通じて、地域経済の生産性を高める役割をしていると主張した。グレンジャー因果性の検定結果、地方財政の支出項目のうち、SOC関連支出がGRDPおよび地方税収入と直接な因果性をもつとの結果でより具体化された。
イ·ジョンチャン、チョン·キヒョン(2017)は、2011年から2015年までのパネルデータを構築および分析し、地方政府における財政支出の規模や財政支出の変動性は、統計的に有意味な水準で、地域経済の成長にネガティブな効果を及ぼすと主張した。すなわち、これは財政自立度が低くなりつつある状況で、目に見える成果を出すだめに財政支出の増加を地域経済の成長には逆効果を齎しうると解釈したのである。
イ·ジャンウク(2019)は、全羅圈·慶尚圈の基礎自治体を対象に、地方財政の投入ルートを通じた地域経済への寄与を確認した。2008年から2017年までの10年間の時系列データを用い、PSM(傾向点数マッチング)を使って地域経済の活性化効果を推定した。前年度の地域経済活性化の予算比率が一定の水準(40%)以上になったとき、1010億ウォンの地方税収入が追加発生すると推定した。
2. 財政乗数の計測
オ·ビョンキ(2005)は、蔚山広域市を除いた15市道および9ヶ年度のデータを用いて、経常的支出や投資的支出がGRDPに及ぼす影響を分析し、広域地方政府の財政乗数より基礎地方政府のが大きいのを確認した。ケインズ区間において、特に基礎地方政府の場合、投資的支出の成果が低いと確認され、財政運用における投資的支出の成果を高める必要性を示唆した。
チェ·ジノ、ソン·ミンキュ(2013)は、1986年から2011年までのデータ分析を通じ、2000年以後は財政乗数が低くなることを明らかにし、この背景には家計負債の増加、景気回復の遅延などが働いたと評価した。
チェ·ビョンホやイ·クンジェ(2014)、および、イ·クンジェやチェ·ビョンホ(2015)は、2000年以後の基礎自治体データを用い、社会開発費と経開発費の算出弾力性や財政乗数を推計し、ひいては、財政支出の長期成長率効果の検討のため、長期経済成長率のモデルを推定した。結果、郡地域では、GRDPに占める財政支出の割合が高いが、経済開発費乗数は市地域より低かった。特に、成長の低迷している郡地域では有意でないとの結果が出たため、空間的衡平性のための財源配分が役に立たず、経済成長の成果を落とす結果を招いたと指摘した。
ナム·サンホ(2014)は、財政支出が主要なマクロ変数に及ぼす影響を分析した。結果、'公共行政および国防'の支出乗数は0.6391、'教育'の支出乗数は0.6039、'保健および医療'の支出乗数は0.3475、'社会保障'の支出乗数は0.5786と分析された。なお、GDPにおける分野別財政支出の乗数効果を比べてみると、公共行政および国防が最も大きく、教育、社会保障、保健および医療の順であるとの結果であった。
イ·キドン他(2016)の研究によると、財政乗数は、教育·文化 3.20、交通·水資源 1.13、社会福祉 0.83の順で導出された。特に、教育·文化は全地域に渡って財政乗数の大きさが1より大きく現れており、この分野における支出が地域内の人的資本の形成過程を経て地域の経済成長につながることを確認し、社会福祉は1より下回っていることから財政支出が非効率的に運用されていると指摘した。
以上のように、財政支出の地域経済への影響および財政乗数の計測に関する先行研究は多数存在するが、特定地域のデータを用いた研究は不足しており、また、地域別の財政支出データを用いた研究であっても、財政支出の分野別データを用いたり地域別の財政乗数を導出した研究はほとんど無い。
つまり、本研究のオリジナリティは、地域の財政支出データを用い、とりわけ社会福祉分野の支出が地域経済に与える影響を財政乗数を通じて明らかにするところにある。
Ⅲ. 忠清南道の財政支出
1. 財政支出の現況
わが国における地方財政支出は、一般行政、公共秩序や安全に関する支出を除き、ほとんどは社会開発および経済開発の性格を帯びる支出項目に構成されている。2008年に改正され今に至る地方財政歳出の体系によると、地方財政の支出は14項目に成されている。
社会開発費に該当する財政支出項目は、教育·文化および観光·環境保護·社会福祉·保健がある。これらの社会開発費の支出項目は、乳児初等教育·高等教育·生涯/職業教育·文化·観光·芸術のみでなく、保健および生活環境改善·住宅および地域社会開発に対する歳出などを含む。とりわけ、基礎生活保障·弱者階層への支援·保育および女性·老人·社会福祉一般など、社会保障に対する支出の割合が高く現れる。一方、経済開発費に関連する財政支出項目は、農林海洋水産·産業中小企業·輸送および交通·国土および地域開発·科学技術がある。これは、農水産開発のための歳出、産業金融、産業技術支援、中小企業など地域経済開発のための歳出とともに、道路·鉄道·空港·港湾などの社会SOCや物流部門への投資を含めている。
<表2>は忠南の財政支出を年度別·分野別に整理したのである。忠南の場合、2019年財政総支出は 20兆5152億ウォンで、なかでも社会福祉分野が 5兆2060億ウォンで支出が最も多く、農林海洋水産が 2兆7546億ウォン、環境保護が 2兆5111億ウォン、国土および地域開発が 2兆857億ウォンの順であった。
2. 財政支出の推移
忠南における財政支出の推移をみると、一般公共行政の場合、2008年から増加しつづけたが、2016年の2.32兆ウォンをピークに以後は減少傾向にある。公共秩序および安全の場合、騰落が繰り返されているが長期スパンでは増加傾向にあった。教育は、2008年から増加しつづけ、文化および観光は2011年に低点をマークした以後は増加傾向にある。環境保護は2013年、多少の財政支出減少はあったが、以後は増加傾向にあり、社会福祉は2008年から持続増加している。保健は財政支出が持続増加してきたが2018年若干減少し、農林海洋水産は2008年から増加傾向にある。
経済開発費のなかで最も重要な項目である産業および中小企業、2010年は前年比大きく下落、2018年も前年比減少であったが、長期スパンでは2010年から増加傾向といえる。輸送および交通は2010年まで減少傾向にあったが2014年以後は持続して支出が増えている。国土および地域開発の場合、2015年以後は増加傾向にあるが、科学技術の場合、全体規模も小さく騰落の幅は大きいが、長期スパンでは減少傾向と見られる。自治団体は2019年、財政支出規模が大きく減少した。
Ⅳ. 分析モデルおよび結果
1. 1次分析:忠南の部門別財政支出が地域経済に及ぼす影響
本稿では1次分析として、2008年~2019年の間、忠南における部門別財政支出がにGRDPに及ぼす影響分析を行う。GRDPに影響を及ぼす説明変数として、分野別財政支出変数の他に、忠南の人口数、製造業の付加価値変数を使用した。
分析のためのモデルは、財政支出および公共投資に対する算出弾力性を推定するBruckner and Tuladhar(2010)の基本モデルを基準にした。
(1) |
式(1)で、従属変数はt期のGRDPを表し、説明変数Gtは地方財政支出変数、XtはGtを除いた他の説明変数のベクター、ϵtは誤差項を意味する。Bruckner and Tuladhar(2010)の推定式を本稿の実証分析に合わせて適用すると、次の(2)のように表すことができる。
(2) |
式(2)において説明変数に入る財政支出変数は、教育(A)、文化および観光(B)、社会福祉(C)、産業および中小企業(D)、輸送および交通(E)であり、追加変数は人口数(a)、製造業の付加価値(b)である。
以上のように、実証分析を行うために従属変数に用いた実質GRDPは、統計庁の地域勘定データを、説明変数のデータは統計庁や地方財政365のデータを活用した。分析モデルは多重回帰分析を用いた。本モデルの検証で、自己相関や異分散は現れず、通常の最小二乗法(OLS)推定を活用した。
1次分析の結果、Durbin-Watson値は 2.095 と出て、自己相関はないと判明され、説明力も 9.0 以上が出た。教育分野を除いて、全ての変数で有意であるとの結果である。
分野別の財政弾力性をみると、教育は 0.042、文化および観光は 0.095、社会福祉は 0.065、産業および中小企業は 0.075、輸送および交通は –0.089 という結果が出た。忠南における教育、文化および観光、社会福祉、産業および中小企業、輸送および交通分野の財政支出は忠南のGRDPに正(+)の相関関係がある反面、輸送および交通分野は不(-)の相関関係があるという結果である。
この結果を通じて、忠南の財政支出弾力性を求めると次のようになる。
忠南における教育分野の財政支出が 10% 増加すると、忠南のGRDPは 0.42% 増加し、文化および観光分野の財政支出が 10% 増加すると、忠南のGRDPは 0.95% 増加すると見なすことができる。また、産業および中小企業分野の財政支出が 10% 増加すると、忠南のGRDPは 0.75% 増加し、社会福祉分野の財政支出が 10% 増加すると、忠南のGRDPは 0.65% 増加すると推定できる。
2. 2次分析:忠南における社会福祉財政乗数の分析
本稿のフォーカスは、とりわけ、社会福祉分野であるため、社会福祉の財政弾力性で財政乗数を分析することを試みる。
分野別の財政支出変数の算出弾力性を推定した値を用い、次の(3)のように、社会福祉分野の財政乗数を導出できる。
(3) |
2019年基準、忠南における社会福祉分野の財政乗数は 1.41 と推定され、2023年までの財政乗数を導出すると次のようになる。
忠南における社会福祉分野の財政乗数は毎年減少しており、この傾向を単純趨勢分析で分析すると、忠南における社会福祉の財政乗数が2022年は1未満に下がると推定される。昨年、新型コロナ対策支援金として、忠南では‘緊急生活安定資金’が支給されたが、昨年の社会福祉財政乗数は 1.29 である。すなわち、社会福祉分野の財政乗数が 1.29 と出たというのは、忠南が社会福祉分野に1ウォンの財政を支出すると、忠南の所得が 1.29ウォン創出できるとの意味である。しかし、2022年の財政乗数は 0.99 が出たので、忠南が社会福祉分野に1ウォンの財政を支出すれば、忠南の所得が1より小さい 0.99ウォンだけ創出されると予測できる。
2021年までは社会福祉の支出が地域内の消費を通じて地域の経済成長に寄与してきたのを確認できたが、ただ、その効果は次第に弱まっている。そのうえ、2022年からはその効果が支出規模より小さいと予測される。
Ⅴ. おわりに
少子高齢化、経済·社会的格差の問題が深刻化し、中央政府はもちろん、地方政府の社会福祉分野における支出拡大が求められている。一方で、新型コロナウィルス感染症という未曾有の社会的災害は、社会福祉および社会的セーフティーネット拡充のための財政支出をいつよりも強く求めている。つまり、財政支出への効率的な意思決定がさらに重要になっていくと考えられる。
本稿では、2009年から2019年までの忠南の財政支出データを用い、分野別、特に社会福祉分野の財政支出がGRDPに与える影響を分析した。
結果、忠南における社会福祉の財政弾力性は0.065で、忠南の社会福祉財政支出は忠南のGRDP に正(+)の相関関係にあることが明らかになった。換言すると、忠南の社会福祉財政が 10% 増加すると、忠南のGRDPは 0.65% 上がると見なすことができる。
なお、社会福祉分野の財政支出変数の算出弾力性の推定値を用いて導出された2019年基準、忠南の社会福祉分野の財政乗数は 1.41 と推定されたが、この意味は、忠南で社会福祉分野に1ウォンの財政支出を行えば、忠南の所得が 1.41 ウォン創出できるとの解釈である。2020年基準の推定値は 1.29、2021年基準のは 1.14 であり、これらの結果から、忠南の社会福祉分野の財政支出が今まではGRDP成長に寄与してきたのがわかる。しかし、財政乗数は年々弱まっているし、2022年以後は、財政乗数が1に至らず、財政支出規模より寄与効果が小さくなると予想される。
ただし、本稿は、忠南という特定地域に限られているため、全国効果とは違いが発生しうるし、時系列も短く、より多い変数を活用できなかった限界を持っている。今後の研究では17市道を含めたパネル分析を通じて、より安定したモデルの研究が必要と考えられる。
新型コロナ変異ウィルスの拡散、感染者の急増などにより長引く新型コロナ発の景気沈滞に対応するため、今年も“コロナ相生国民支援金”という災害支援金の支給が決定された。当初、所得下位88%の国民が対象であったが2)、京畿道が“災害基本所得”の概念をもって全道民支給に舵を切ってから3)、忠南を含む多くの地域で支給方針を変えている。忠南の場合、昨年は、災害支援金である“緊急生活安定資金”を選別支給方式で進めたが、今年は基礎自治体の間で不平等が発生してはならないという自治体首長らのコンセンサスのもと、全道民への普遍支給方式を選択した(唐津市を除く)。ただ、予算の不足する地域は、地方債を発行してまで支給するという決定には4)、やや懸念が残る。
災害支援金の目的は、生活苦への緊急処方、地域内の自営業、中小企業との共生、および、ここから創出される所得による地域経済の好循環づくりであるが、本稿の結果から、忠南の場合は、社会福祉的な性格の財政支出はその効果が毎年弱まっているのがわかる。
限られた資源や財政状況、財政の効率的かつ効果的支出などを総合的に鑑み、地域の財政状況相応な政策を進める意思決定がなお重要な時点である。
References
- ナム·サンホ(2014).『分野別財政支出の所得再配分の効果分析』, 国会予算政策處.
- 厶ン·シジン、イ·クンデ、チェ·ビョンホ(2015). “わが国における社会SOCの空間的外部効果:地方財政支出の構造調整に関するインプリケーション”, 『国土研究』, 84(3): 55-73.
- ヨ·ユジン他(2021).『コロナ19の社会経済的影響分析および緊急災難支援金の効果評価研究(地域編)』, 経済人文社会研究会協同研究.
- オ·ビョンキ(2005). “首都圏広域自治団体の地域生産や地方財政支出の域外流出入効果に関する研究”,『ソウル都市研究』, 6(4): 81-100.
- オ·ビョンキ(2006). “パネルデータを用いた地方歳出の効率性評価”,『韓国地方財政論集』, 11(2): 5-31.
- オ·ビョンキ(2012). “ダイナミック·パネル分析を用いた広域自治団体の投資的支出の地域経済成果分析”, 『地方行政研究』, 26(1): 137-160.
- オ·ビョンキ(2014). “地域経済成長と地方財政の因果関係分析:投資的支出の経済的機能分類にようダイナミック·パネル分析を中心に”,『地方政府研究』, 18(3): 143-164..
- オ·ビョンキ、キ厶·テヨン(2005). “地方自治団体の社会開発費の性格に関する研究”, 『韓国地方財政論集』, 10(2): 53-84.
- ユン·チウン、キ厶·テヨン、キ厶·ジュキョン(2009). “地方政府の財政支出の地域経済活性化効果分析”,『地方政府研究』, 13(3): 135-157.
- イ·クンジェ、チェ·ビョンホ(2015). “市郡の財政乗数や歳出構造に関するインプリケーション”,『地方政府研究』, 19(2): 299-317.
- イ·キドン、厶ン·シジン、チェ·ジア(2016).『地方財政支出が地域経済の成長および所得格差に及ぼす影響』, 韓国銀行大丘慶北本部.
- イ·ヨンソン(2009). “市郡区の社会開発費が地域内総生産に与える影響に関する実証分析”,『地域研究』, 25(3): 5-23.
- イ·ジャンウク(2019). “地方財政支出の地域経済活性化効果”,『韓国地方財政学会セミナー資料集』, 233-254.
- チェ·ビョンホ、イ·クンジェ(2014). “地方財政支出乗数や地方歳出構造調整に関するインプリケーション”, 『韓国地方財政論集』, 19(2): 25-57.
- チェ·チノ、ソン·ミンキュ(2013). “財政支出の成長に関する影響力変化や示唆”,『経済リビュー』, 韓国銀行.
- https://lofin.mois.go.kr, 地方財政365.
- https://www.korea.kr, 大韓民国政策ブリフィング 政策ウィキ.
- https://gonggam.korea.kr, 政策週刊誌 共感.
- 中央日報 (2021. 9. 27)
- Newsis (2021. 8. 13)
2007년 고려대학교에서 경제학 박사학위를 취득하고 현재 충남연구원 경제·산업연구실 연구위원으로 재직중이다. 주요 논문으로는 “FTA활용지원센터가 중소수출기업에 미치는 영향분석”(2014, Journal of the Korean Data Analysis Society), “전기요금 지역차등에 관한 일고찰-전기요금제도개편이 제조업 부가가치에 미치는 영향을 중심으로(교신저자)”(2017, 재정정책논집) 등 국내에서 다수 연구논문을 발표하였다. 주요 관심분야는 국제통상, 산업단지 등이다.
2011년 일본 요코하마국립대학에서 경제학 박사학위를 취득하고 현재 충남연구원 경제·산업연구실 책임연구원으로 재직중이다. 저서로 “生活を支える社会のしくみを考える:現代日本のナショナルㆍミニマム保障”(2019, 일본 日本経済評論社, 공저) 등이 있으며 “지역상권내 할인마트가 소상공인 이윤에 미치는 영향: 충남사례를 중심으로”(2019, GRI연구논총) 등 국내외에 다수의 연구논문을 발표하였다. 주요 관심분야는 지역상업, 지방재정 등이다.